俺は目の前に建つ家が、自分のものではないと信じたかった。しかし、家の中からは俺の帰りを待つベルの声が聞こえてくる。

「リーバス〜!!今日は寝かせないぜ!朝まで飲み語ろうぜ〜!!」

レムが俺の肩に腕を回す。俺は慌ててその腕を振りほどいた。

「勝手に決めるな!大体、俺の家はバーではない!飲みたければ勝手に飲みに行けばいいだろう!!」

そう言う俺の肩に再度腕をレムは回し、「まあまあまあ!そうお固いこと言いなさんな!」と言いながら、まるで自分の家のように俺を連れて入っていく。

「ワン!」

ベルが尻尾を振って勝手に来た客を出迎える。ベルは基本誰に対しても温厚だ。……事件さえ起こらなければだが。

「おお〜!相変わらず片付いてますなぁ!」

あまり物を置かない俺のリビングを見て、レムは羨ましげな表情を見せながら、勧めてもいないのにソファに座る。一度座れば絶対にレムは動かない。諦めて付き合うしかなさそうだ。

「…仕方がない。今日くらいは付き合ってやる」