入れ墨男は慣れたように包丁を振り回し、俺はそれを避けながら拳を相手に叩き込む。しかし、それもひらりと避けられてしまう。

さすが文族だ。戦い慣れている。酒が入った体とは思えない動きだ。

「久々に戦いがいのある奴だ!」

入れ墨男がにやりと笑う。俺はそれを無視して包丁を何とか奪おうとする。

しばらく攻撃の避けあいが続いたが、神は善人の味方をしてくれるようだ。

入れ墨男の体がよろけた。その瞬間を俺は最後のチャンスだと思い、入れ墨男の腕を蹴り上げる。包丁は宙を舞い、床に落ちた。素早くフローレンスが回収する。

俺は入れ墨男の背後に回り、腕をひねって地面にねじ伏せる。俺が地面に入れ墨男を倒すと、従業員たちが一斉に集まって俺と一緒に男を取り押さえた。

「いてててて!!もっと優しくしやがれ!!」

喚く男に、俺は質問をぶつける。

「どうしてこんなことをした!?リリーを襲った目的は何だ!!答えろ!!」

怒気を含んだ声で訊ねると、男はいきなり大声で笑いだした。

「あっははははははははは!!」

狂気じみた笑いが大広間に響く。

「何がおかしい!」

俺が怒鳴ると、「世界平和対策本部の議長さんよぉ〜。あんた、ほんとに何もわかっちゃいねぇな!」と男は言った。