俺の同僚曰く、世界平和はどんちゃん騒ぎと笑顔でできている「下」

この国の貴族には、失礼なことを言われるという苦い思い出もある。しかし、この計画をリーから聞いた時、来たくないとは一ミリも思わなかった。

気候は温暖で過ごしやすい。食べ物もうまい。貴族ではなく一般市民なら、陽気で親しみやすい人が多い。

何よりも大きな理由は、リリーが生まれ、今日を生きる国だ。嫌いになど、決してならない。

ふと、妙なことに気づいた。馬車は都会から、田舎の方へと進んでいく。たくさん店が並んでいた街の景色も、今は畑が広がっている。

リリーの家はこんな田舎にあるのか?俺の疑問をジャックが口にする。

「……貴族にしては珍しいですね。ベルベット卿のように貴族だけのパーティーを開催するわけでもないのに……」

ベルベット卿が自然の中に屋敷を建てたのは、一般市民がパーティー会場に来ることがないようにするためと嫌味だけしか言わない演説で聞いた。

しかし、リリーは貴族だけのパーティーは嫌いだ。こんな田舎に建てる理由がない。

「リリーはおしゃれに気を使っていますし、こんな田舎じゃドレスを買うのにも不便ですわ」

フローレンスが言う。

馬車に揺られること二時間。家々がぽつんぽつんと建っている田舎に、リリーの屋敷はあった。