「ゴホン」


父さんがわざとらしい咳をする


「一葉?三葉は俺の娘だ慎みなさい!」


「うるさい!」


俺は父さんに向かって舌をだす


ケラケラと笑う母さん


不機嫌そうな顔で眉間にシワを寄せる父さん


「お父さん……ありがとう」


三葉がゆっくり話し始める


「お父さんがあの日私を産めって言わなければ私はここにいない
一葉とも会えなかった……
お父さんとも一葉のお母さんとも咲ちゃん太陽くん陽葵ちゃんとも会えなかった

お父さん……ありがとう」



父さんがまた泣いた


三葉は席を立ち父さんの方に向かうとギュッと父さんを抱きしめた


11年振りに触れ合った父と子に俺は少し妬いた



俺達の軌跡はもしかしたら奇跡に近いものがあるかもしれない


でもそれはどんなものであろうと



愛の形に違いなかった