「一葉(いちよう)!」

誰が俺を呼ぶ声がする

「お前寝すぎ!」

目を開けて前を見ると陸斗が俺を呆れた顔で眺めている


(あ……夢か……)

何て懐かしい夢だろう

あの日のあの子が居てくれたおかげで
俺は新しく出来た父さんと仲良くなれた


あの日のことが何だか嬉しくて
母さんにしおりの作り方を教えて貰い
10年経つ今でも宝物として残っている




「今日放課後なにすんの?」

「んー、何もしねぇ」

陸斗の質問に素っ気ない態度で答える

「え?!お前彼女は?!」

「ん?光華【みつか】のこと?2日前に別れたけど?」

毎日のように誰かに告白されるのが面倒くさくなった頃
俺が誰かと付き合えば皆諦めてくれると思って
付き合ったのが光華だ

『私、束縛しないし!』

そう言っていたのに付き合えば
束縛の嵐

耐えきれず別れを告げた


「は?聞いてない!!光華ちゃんめっちゃ可愛かったのに!!」

「陸、うるさい」

陸斗のでかい声が鼓膜に響く


勿体ねぇと言いながらまだギャアギャア言っている


「は?ってことはよ?一葉!お前合コン行けるじゃん!お前来ると女の子達盛り上がるんだよ!!お願いします!!」


「却下」

「なんでだよー!!一葉まじモテるんだから!!いこうぜ」

「俺はモテなくていいんだよ」

さらにギャアギャア言い出す陸斗を置いて
購買に飯を買いに行くことにした