「どうして泣いてるの?」

下の方から声がする


「泣いてない」

目が合わないようにまた空を仰ぐ


「悲しいの?」


小さな女の子はジャングルジムに登ってくる

「悲しくなんかない」

「じゃぁどうして泣いてるの?」

横に座った女の子は俺の顔を覗いた

「今日新しいお父さんができるんだ」

「そっか!!そしたら嬉しい涙だね!」


「ちょっと待ってて!」

そう言って
慌ててジャングルジムを降りた女の子はどこかに行ってしまう

女の子が居なくなって
なんだか寂しくなって
俺もジャングルジムを降りた


すると右手に1本の花を持ってきた女の子

「これあげる!!」

渡された花を掴む


それは野に咲くシロツメクサ

「パパがね!言ってたの!この花の言葉は【こうふく】なんだって!」


夕焼けに照らされた俺は
逆光で女の子の顔を見ることが出来なかった

ただ少しだけ勇気を貰えたような気がする


その子は母親らしき人が迎えに来たときに
『みつ』と呼ばれていた