あの日はいつもの様にお母さんがお迎えに来てくれた


お母さんと手を繋いで帰る道のりが大好きだった


でもあの日は違った


険しい顔のお母さんは私と手を繋いではくれなかった

家に帰るといつもと何かが違う


シューズラックの上に飾られていた写真はなくなり


お父さんの靴も


お父さんが大事にしていたサボテンも


お母さんがお父さんのためにアイロンをかけたワイシャツも


全てがグチャグチャになっていた



「お母さん?……お父さんは?」


お母さんの険しい顔が、さらに険しさを増した


私が言ってはいけない事を口にしたという事に気づいた時にはもう遅かった


お母さんは手に持っていた家の鍵をわたしになげつけた

「出てったわよ……あいつは私達を置いて出てったのよ!!」


私の肩を強い力で握ったお母さんは私を大きく揺さぶる


「ねぇ!聞いてるの?!三葉!!
お母さんとあなたはお父さんに捨てられたのよ」

いつものお母さんじゃなくて

怖くて怖くて

私は大声で泣いた


「何であんたが泣くのよ!!泣きたのはこっちよ!!あんたがそんなんだから捨てられたのよ!!」


お母さんは手を振りかぶり
私の頬をめがけて振り下ろす


ーーバチン


一瞬時が止まったかと思った


人は恐怖でもなみだが出なくなるんだ……


怯える目でお母さんを見る


お母さんはそれも気に入らなかったのか
もう一度私をぶった