「まさか──」

 ゆっくりと振り返り、校長室の扉を見つめた。そして、匠の持っていたコピーキーを思い出す。

「いや。そんな馬鹿なこと──僕の思い過ごしだ」

 匠の計り知れない能力に耕平は少しだけ怖くなった。あいつの両親は僕と同じ、そこらへんの一般人だ。

 大きな権力がある訳じゃない。なのに、あいつはいつも何かに守られているかのように難なくこなしていく。

 それはつまり、あいつ自身の能力に他ならない。これは、あいつに深入りするなという事なのか。ただの高校生だぞ。

「ぼ、僕は何も知らないぞ」

 昨夜の件は知らなかった事にする。僕には関係ない。

 耕平はそう何度も自分に言い聞かせ、七不思議の解決にひと役買った事を忘却の彼方に投げ捨てた──



END