「なので、二人で帰ってもらえないか。門は閉めてくれるだけでいいから」

 そう言って、匠は健と耕平に軽く手を挙げて門に向かった。

「やっと終わった」

 耕平は、匠の後ろ姿をしばらく見つめて隣の健に目を移す。

「結局、なんだったんだ?」

「人助け」

「誰を助けたんだよ」

「幽霊に怖がる人」

 そう言われれば確かに人助けかもしれない。しかし、七不思議の実体を知れば怖がる人はいなかったんじゃないだろうか。

 この時間を返せと言いたいくらいには馬鹿馬鹿しかった。けれどそれは、真実を知ったからであって、知らなかったら今も怖いままだったかもしれない。

 いやまて、僕は幽霊なんか信じちゃいない。見たけど信じてはいないんだ。あれはきっと幻覚だ。今日のことは忘れよう。

 耕平は頭を抱え、教室に置いてきた上着を取りに戻り、健と共に寮に帰っていった。