「一番、嫌なやつ残したよね~」

 健(けん)は重い足取りで匠の後ろをついていく。

「嫌なやつ?」

 何も知らない耕平(こうへい)は匠(たくみ)に顔を向けたが、彼は何も応えず食堂に足を進める。

「最後の七不思議は絶対、怖いよ。厨房で自分の頭を料理してる男だもん」

「なんだって?」

 それを聞いた耕平は、冗談じゃないとばかりに眉間のしわをこれでもかと深く刻んだ。幽霊を信じていなくたって、そんなものに遭遇したくはない。

「僕は帰らせてもら──」

「怖いから一緒にいてね」

 健はくるりと踵(きびす)を返した耕平の首根っこを掴み、引きずるようにして食堂に向かった。