艶を帯びた黒髪を背中まで伸ばし、いつも後ろで一つに束ねている。伸ばしている理由は特にない。

 伸ばしてみたらことのほか好評で、切ろうとすると母親が残念がるので切るに切れないといったところだ。

 特にマザコンという訳でもなく。哀しげな妻の顔を見たくない父親が断固、反対するというのが主な理由だ。

 切ってしまえばそれにも慣れるというものであるが、そこまでして切りたい訳ではない。