──校舎に入り、三階を目指す。

 西側の奥にある美術室は、何故かひんやりと感じられた。匠が美術室の扉の前に来るとカギを取り出す。

「なんでカギを持っているんだ」

 声を上げた耕平に健が「静かに」と自分の唇に人差し指をあてる。

 そうして、木製の扉がゆっくりと開かれる。真っ暗な部屋の真ん中には、ぽつんと置かれたイーゼルにキャンバスが乗せられていた。

 外は風が吹いているのか、窓がガタリと音を立てる。

 油絵の具の独特の臭いが、三人の鼻腔を刺激した。ゆっくりと踏み入り、イーゼルの前に立つ。

「俺たちが来たから、逃げちゃったのかな?」

 教室を見回すも、さしたる異変もなく、健は丸椅子を見下ろした。