泳げないのに一人で海に行き、少年は溺れてそのまま還らぬ人となった。せめて泳げるようになりたい──そんな想いが少年をこの世に引き留めている。

「ちょっと待て」

 話を聞いていた耕平が割って入る。

「溺れたのは海なんだろ? じゃあ、なんでこのプールにいるんだ」

 ここから海はかなり遠いぞ。

「家がこの近くらしい」

「そうなんだ」

 なにを感心しているんだこいつはと耕平は健を見やった。

 一端は成仏しようと家に戻ったが、やっぱり泳げるようになりたくて探していたらこのプールを見つけた。

「しかも、この学園の生徒じゃないのかよ」

 耕平は開いた口が塞がらない。

「ここは高等部だよ」

 中学生の彼がこの学園の生徒なはずがないだろう。

 そんな事を言われても、こっちは姿が見えないんだから解る訳がない。