「度胸があるよね」

 教室でも真っ暗で待ってたし。

「本当か?」

 あいつ、本気で大丈夫なのか。なんだって一人で真っ暗な中に平気でいられるんだ。

 しばらくすると、

「健」

 匠が健を呼び寄せた。

「なに?」

「言った通りに準備はしてきたかな」

「うん」

 ぼんやりとした光に視線を合わせるも、耕平と同様に健にもその姿は見えない。

「ちゃんと着てきたよ」

 おもむろに服を脱ぎ水着姿になる。

「少年に、泳ぎを教えてやってくれないかい」

「え?」

 誰に? と小首をかしげる健に、匠は右手を口元に添えて説明を始めた。

「もしかすると、ここにいる幽霊は泳げないことに悔いを残したのではないだろうかと考えていたんだよ」

 話を聞くと、まさにそうだった。