──健は二年五組と書かれたプレートを見上げ、目の前にある木の扉をゆっくりと引いていく。
 不気味な音が廊下に響いた。

「早かったね」

 真っ暗な教室にぽつんと一人、匠が自分の席に腰掛けていた。

「怖くないの?」

 何にも見えないよ。

「灯りをつけると見つかってしまうからね」

 もう大丈夫だろうと持っていた懐中電灯のスイッチをオンにする。

「不思議なんだけど、とっても都合良く正門が少し開いてたよ。教室もカギかかってないね」

 わざとらしい健の言葉に、匠は何かを含んだ笑みを浮かべた。