「とりあえず、プレーしてもらおうか。一二年合同の中に混じって、入ってね。チームはグッパで決めて。決まったら俺のとこに来て礼でスタートだ、いいか?」
と、部長らしき先輩が言う。
「はい!」
とみんなで返事をする。初めてだから全く分からないけど、バスケは兄に教えて貰ってたからそこそこ出来ると思う。

グッパで決め、俺は赤チーム。1年は俺を含めて3人、2年が2人。相手は1年が2人、2年が3人のちょっと相手が有利な感じだ。

そして、ジャンプボールから始まった試合。ジャンプボールは、俺たちのチームが取った。
すぐにパスが来て、俺は兄のことを思い出した。
『ボールをとったら、まずは前へ駆け抜けろ。弱くてもいい、カッコつけなくてもいい。ただ、チームのためになることをすればそれだけでいいんだよ』
前へ進む。1人を抜き、またもう1人を抜き、俺は、スリーポイントラインに立ち、兄に教えて貰ったとおりに打った。


…通った。

「すげーじゃん、葵威!」

俺は実力が認められて、歓迎された。

…自分に逃げてちゃダメだ。
そう、言われた気がしたんだ。

家に帰ると、父さんと母さんが居て。
「こんな時間まで何してたんだ。」
「別に。部活」
「何部に入ったの、何も言ってなかったじゃない、お金の問題もあるんだから、ちゃんと言いなさいよ?」
…誰が頼るか。俺のことを信用しない、そんなの家族なんかじゃねぇ。家族だって思っててくれたのはいつだって兄貴だけだった。
「別に父さんと母さんに話すことじゃないし、もう寝るから」
とスタスタと上に駆け上がった俺。

自分の部屋に入り、スマホを見ると、『バスケ部』というグループに招待されていた。
入会する、のボタンを押して、スタンプで挨拶をして、ベットに寝っ転がった。

俺の部屋は、兄貴と合同で使っていた場所。二段ベットで、学習机もふたつある。
久しぶりに帰ってきた俺は、なんだか兄がいた頃のことを思い出していた。
「なんでなんだろうな、俺、なんでこんなにも嫌われてる…のかなあ…?」
目から涙が零れた。とっさに目を拭う。

そのまま夢の世界へ入り込んだ。