「薫ちゃんの彼氏か。あれ。」

「俺だって知らないよ。
第一誰なんだよ。あいつ。」

「あいつ学年で1番イケメンと噂されてる
らしいぜ。大山隼也って言うんだってよ。」

「そりゃ。薫ちゃんレベルだと
あれくらいじゃないと釣り合わないって。」

視線を向けると、大山のペンケースは
あのとき彼女が買ったものだった。

やはり嘘だったのか。

「風太。こればっかりは相手が強すぎるな。」

まだそうと決まったわけじゃないのに、
心にモヤモヤしたものができた。

何より嘘をつかれたことが
1番ショックだった。

嫌だ。嫌すぎる。
帰りの電車に座っていると
彼女が隣に座ってきた。

「河上くんもこの時間なんだね。」

「うん。」

午後4時12分。
この時間帯の電車に乗る人は少なく
とても静かだ。

電車の音がいつもより大きく聞こえた。