「お先に失礼いたします」

6:55。
あたしがそう言って席を立つと、結局誤解が解けなかった近藤さんがニヤニヤ、からかうように笑った。

でもいい。誤解が解けなくても。

気づいたから。本当にクリスマスを一緒に過ごしたい人が誰なのか。

だからちゃんと、矢部っちに話そう。
あたしは翔平と付き合っていて、初めてのクリスマスは彼と一緒に過ごしたいんだと。

たとえ、食事に行けなくても。彼と一緒に仕事をすることになっても構わない。

エレベーターで降りて外に出ると、冷たい空気が体を包む。矢部っちは寒そうに肩を竦めながら、ガードレールに凭れかかっていた。今日はサンタの格好をしていないけれど、赤いダウンジャケットを羽織っている。

「矢部っち!」
「あれ。茉咲先輩。翔平先輩は?」
「そのことなんだけど……」