そのままベッドから動けない。
空タローとじゃれたかったけれど、空タローは猫アレルギーのお姉ちゃんを考慮して、外で寝ることになってる。

痛む胸に鞭を打つ。弱いそよ菜がいけないんだ。動かなきゃ。
ドアを開けた瞬間にお腹が痛くなって部屋に戻りたくなる。
洋服を着替えるだけ、と自分に言い訳をしてクローゼットを開ける。
服も外に出るのが嫌で、2年くらい前のしかない。
いい加減このセーターの袖は足りないけど、そよ菜はワガママ言える立場じゃないから、セーターにジーンズを履いてドアを開けた。

2年前のジーパンなんて、足がどんどん長くなってってるお姉ちゃんは絶対はいらないんだろうな。
足、伸びてないのかな…なんて嘆息を吐きながら下に降りる。
リビングでテレビを見ていたお母さんは、私と目が合うと眉を釣り上げた。

「あら、そよ菜出かけるの。他の子は学校へ行ってる時間なのに」
「…違うよ。空タロー…」
「お姉ちゃんの部屋には入れないで頂戴ね。ノミがついてるから洗ってよ。朝ごはんは勝手に食べて頂戴」

そのままテレビを消し、ダイニングに消えるお母さん。
お母さんはなんら間違ったことは言ってない。正論な分、心が痛む。

空タローは庭でグッタリとしていた。
寝てるんじゃない。

「空タロー⁈どうしたの空タロー⁈」

くぅ、と弱々しく鳴く空タロー。
慌てて家に駆け込む。

「お母さん、空タローが苦しそうなの!動物病院連れてってくるね」
「ご近所に見られたら恥ずかしいから遠いほうに行って頂戴ね。ケージに入れて」

ケージ…場所がどこかわからない。
少し古いけど、一代前のケージにしよう。

少し扉はガタガタするものの、そのケージに空タローを入れ、お母さんのいうとおりに遠いほうへ行こうと門を出る。

慌てすぎてICカードを忘れてしまった。歩きでも行けるけど…

覚悟を決めて走り出した。