「そよ菜、そよ菜?」

コンコン。
ドアをノックする音がする。
返事をしようとしたら、息が詰まって、詰まって、声が出せなくなった。

「…。そう、今日も学校はいかないのね」

お母さん、ごめんね。
そう思っても、ヒュッという掠れた音しか喉から出ない。

「亜美も雪も、とっくに高校と大学行ったわよ」

ひゅー…ひゅー…
お母さん、息が苦しいの。
わざとじゃないの!

「亜美はミスキャンパス候補ですって。雪なんか2年連続青風高校ミスコンじゃない」

ねぇ、お母さん。
お母さん。助けてよ。

「…また無視なの。そよ菜も、…お母さんに、お姉ちゃんに似ればよかったのに」

ドアから立ち去っていくスリッパの音。
嗚咽が止まらなくて、うっ、うっ、と間抜けな声を出してしまう。

みっともない。
いつか言われた言葉が頭の中でリフレインする。
青風高校ミスコンかぁ。
さすがお姉ちゃん。私も…

「はは…無理に決まってるじゃない。そよ菜のバカ」

自嘲するように漏らせば、また息ができなくなった。