新しいクラスになって早二週間。
クラス全体が徐々にクラスの雰囲気に慣れて来た頃、わたしには一つ気になることがあった。



「四谷……四谷っ」


出席をとっていた担任の顔が、ここで一気に渋くなる。


「……また休みか。四谷は」


小さなため息混じりにこう呟いた先生に、教室中も妙な静けさに包まれた。


わたしは視線を、自分の隣に移す。
空っぽの机の持ち主は、もちろん彼。
四谷 翔卯(よつや しょう)くん。


新しいクラスになってまだ、二~三回しか登校していない。



担任が出て行った教室はまた、いつもの喧騒を取り戻す。



そんな中で、


「四谷くんってさ、余所の高校のヤツと毎晩ケンカしまくってるんでしょ?」


わたしの前の席に座っていた女の子二人が、何やら妙な噂を立てていた。



「ねぇ……それって本当なの?」



突然割り込んだわたしに、二人は一瞬顔を見合わせた後、


「本当かは知らないけど、有名なんだよ? 休んでばっかなのはバイクで事故ったとか……」


「ケンカで病院送りになったとかも言われてるの」



(……そんなの、勝手な思い込みなんじゃ……)