「残されたのは指輪と、煮えきれん気持ちだけ。やから……俺はこの二つの指輪に憧れてしまうねん」


ペアの指輪に込められた寅毅くんの想い。


「だから……本気にならないの?」


叶わなかった恋心に、まだ未練を抱えた心。


「……ならへんのちゃう、なられへんねん。……また、あんな風になるんが嫌で逃げてるだけ」


「……そっか」


寅毅くんにとってそれだけ、その人の存在は大きく寅毅くんの中に巣くっているんだ。



「でもな……愛都ちゃんが校舎裏で言ってくれた言葉。めっちゃビビったけど、めっちゃ嬉しかった。ちゃんと俺を見てくれてる娘がおるって」


「寅毅くん……」



寅毅くんの顔に優しい色が浮かんだ。
いつもの人懐っこい笑顔とは違う、温かみのこもった瞳。



「もう、逃げんでも済むかな?」


「うんっ。大丈夫だよ。絶対……」



寅毅くんの瞳に灯った優しさと温もりは、紛れもない本物。


だから、大丈夫。

また本気で向き合えるはずだよ。



自分の素直な気持ちと……。