『The story of……』

「うん……そうだな」


同意してみせる二塚くんの顔が、力無く笑った。

わたしを良いと言ってくれた市原くんに高鳴る胸とは裏腹に、曇った二塚くんの表情が頭から離れない。


(二塚くん……)




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


サッカー部の練習試合前日。


練習に意気込むサッカー部が、グラウンド狭しと走り回っている。


無意識に目で探してしまうのは、曇った表情を見せていた二塚くんだった。

一人、裏庭の壁相手に練習していた姿。

市原くんのお陰でレギュラーになったって言った、辛そうな顔。



試合を前日に控えた二塚くんは今、どんな気持ちで居てるんだろう……。



「上総っ」

「市原くん……?」



教室の窓からグラウンドを見下ろしていた背中に、思いがけない人物が声をかけてきた。


「市原くんっ、練習はっ?」


練習着にも着替えず、制服のまま駆け込んできた市原くんに思わず声を上げる。


「隆丑……隆丑見なかった?」


「二塚くん?」



息を切らした市原くんは、忙しなく視線を動かして辺りを窺っている。