『The story of……』

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


翌日の放課後。

(携帯、教室に忘れちゃった……)


教室に忘れ物をしたことを思い出し、玄関から教室へと引き返してきた。

教室の前に差し掛かった時、


「なぁ、諫音」

「んっ?」


誰も居なくなった教室に、市原くんと二塚くんが向かい合って立っていた。


いつも通りの光景なのに、どことなく二塚くんの口調は歯切れが悪い。


「……諫音は、上総のコトどう思ってる?」


(えっ……わたし?)


思わず胸がドキッと大きく跳ねる。
聞かれた市原くんも、一瞬驚いたように目を見開いた後、


「どうって、なんだよっ」


訝しげに眉を寄せて、二塚くんを見ている。


「ううん。最近、仲良いから」


「同じ委員だから当たり前だろっ」


二塚くんの表情がふっと曇って、また笑顔に戻る。
その笑顔に違和感を感じるのは、わたしだけだろうか……。


「ははっ。変なこと聞いてごめんっ。……先、部活行く」


やっぱり今日の二塚くんは、どこか歯切れが悪い。
二塚くんの去った教室に視線を戻した。


そこには、見たことも無い難しい顔をした市原くんが、窓の外を見つめていた。

(市原くん……)