「絶対勝つよ。……上総が直してくれたんだから、絶対勝つ」
こう言って市原くんは、手首に戻ったブレスレットを指で軽く弾き……わたしに笑いかけた。
(市原くん……)
これで負けたらきっと……ブレスレットを直したわたしが傷ついてしまうから……。
市原くんはこうして、自信満々の笑顔でわたしを安心させてくれる。
そんな彼の優しさに、わたしの胸はジワッと温かくなり……ドキドキが広がっていった。
「そうだ。……貰いもので悪いけど」
ズボンのポケットから使い込まれた革の財布を取り出し、市原くんが何やらわたしに差し出した。
反射的に受け取ったそれは、映画の無料券が二枚。
「ブレスレットの礼」
「良いよっ! わたしが勝手にやったことだし……」
慌てて無料券を市原くんに突き返すわたしに、市原くんは困ったように笑ってる。
そして、
「じゃあさ、一緒に行こっか? ……この前、図書室で話した映画観に」
こう言ってわたしの手から無料券を一枚だけ引き取った市原くんがにっとはにかむ。
それに答えるように笑ったわたしは、この上ない程の満面の笑顔だった。

