『The story of……』

ふっと蘇った淡く苦い思い出を、小さく笑って誤魔化した。


「でも、誰かの為に一生懸命になれるのって、すごいよ」



そう言って笑った二塚くんの笑顔に、頬が一気に赤くなる。


「そ、そんな風に言われたら照れるよ~」


市原くんと違って、あまり女の子と喋る印象の無い二塚くん。


そんな二塚くんに面と向かって褒められると、さすがに照れる。



でも、この時はまだ気付かなかった。


二塚くんが、わたしを褒めてくれた理由。
秘められた、彼の気持ちを……。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「はいっ。これ」


「おっ。元通りだっ。大変だっただろ」


「ううん。そんなこと」


約束通り、市原くんのブレスレットを直してきたわたしは、登校したばかりの市原くんにすぐそれを渡した。


手首にそれを戻し、安心したように笑う市原くん。



(あぁ。徹夜で頑張って良かった……)


やっぱり市原くんの笑顔は、わたしの心を弾ませてくれる。
でも、一つだけ気掛かりなことがあった。


「……ジンクスが」


お姉さんが作ってくれたブレスレットのジンクス。
わたしが作り直しても……そこまではきっと直せてない。