『The story of……』

何故だかわからないけど……何か市原くんの役に立ちたかった。


「サンキュ、上総」

「うんっ」



だって、市原くんの笑顔でこんなにも、わたしの心は弾むんだから……。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「ありがとうございましたっ」


清々しい程爽やかな笑顔を残して、下級生の女の子が走り去って行った。


図書室のコピー機の使い方に手こずっていたのを、ちょっと手伝っただけ。



「やっぱり、上総は優しいね」


そこで、わたしは思いがけない声で名前を呼ばれた。





「二塚くんっ」


振り向いた先に居たのは、少し離れたところに立っていた二塚くんだった。


「……中学の時も、よく後輩に囲まれてたよな。上総」


わたしが中学時代に所属していたのは、吹奏楽部だった。
確かに、他の同級生より後輩と話す機会は多い方だったけど……それも仕方がない。
だって、


「わたし、実力が無かったから……どんな形でも貢献したくてさ」


わたしには楽器の腕前という、先輩としての資質が無かったから。