『The story of……』

「大切なモノ?」


転がるストーンを、市原くんの手のひらに集めながら尋ねる。


「ジンクス。姉貴が嫁ぐ前にくれたんだけど……それから一回も試合で負けてなくてさ」


「そうだったんだぁ」


見当たる限りのストーンは集めた。
切れたゴムと、集めたストーンを見つめながら市原くんがまたため息。



「……今週の試合は間に合わないな」


作り手だったお姉さんは、旦那さんである柏田先生の地元に行ってしまったらしい。

とてもじゃないけど、今週の練習試合には間に合わない。



「あの……わたしで良かったら、直すよ?」


「えっ?」


困ってため息をつく市原くんが見ていられなかった。


(きっと、付けてないと落ち着いて試合に出れないはず)


「お姉さんと同じにはならないと思うけど……」


ジンクスが継続される保証は無い。
でもきっと、バラバラのまま市原くんが試合にのぞむよりずっと良い。


「んじゃあ……頼む」


「うんっ。頑張って直すね」



市原くんからストーンを受け取り、頷いた。