『The story of……』

「先生も人使い荒いよなぁ」


「今日配るものを当日にお願いするなんてね……」



図書室の机に隣り合って座り、ひたすらパチパチとホッチキスを打ち込んでいく。



「あっ」

「どうしたの?」


手元から顔を上げると、市原くんが本棚をじっと見つめている。


その視線の先は、最新の雑誌コーナー。


(市原くん、読みたい本でもあるのかな……)



「あの映画、面白そうだよな」


「えっ、あぁ。この前テレビで前編やってたヤツだよね」


市原くんが気になったのは、表紙を飾っていた今話題の新作映画だった。


(この間の前編、面白かったなぁ。良いところで終わってたし)



「公開に合わせて前編放送するとか、やり方がズルいよなぁ」


「ふふっ。まんまと見たくなっちゃうもんね」



再びホッチキスを握り、他愛ないお喋りをしながら残りのプリントを綴じていく。



「うわっ」

「あっ」



突然、市原くんが右手に付けていたストーンのブレスレットが、軽い音を立てながら机を転がり始めた。


「げっ……。ゴム切れた」


散らばったストーンを集めながら、市原くんは深いため息をついた。