『The story of……』

一定の間合いを保ったままのわたしたちに、



「さーとーりーくんっ？」




突如として聡利くんの背後から聞こえた、わざとらしいくらいの甘い声。



その気配と声を聞いた瞬間、



「っっ！？」



みるみるうちに顔を歪めた聡利くんは、今にも駆け出そうと足を踏み込んだ。


その時、


「きゃっ！」

「わっ！」



さっきまで後退りしていた聡利くんが突然こちらに踏み込んだものだから、避けることも出来ず、



（避けれないよっ！）



体勢を崩したまま正面の聡利くんに思い切り抱き付いてしまった。



「スイマセンっ！！」


「わたしの方こそ……」



自分の体からわたしを即座に離し、聡利くんは今までで一番赤い顔で何度も頭を下げている。



もういいと聡利くんを止めようとしたわたしより早く、



「……さーとーりーくんっ？」



さっきとは打って変わって、もの凄い低いトーンで名前を呼んだ遠野さんが、聡利くんの肩を鷲掴み。



「上総さんに手ぇ出そうなんて百年早いわよっ」



遠野さんの手を振り切るなり、一目散に走り去って行く聡利くん。