放課後の廊下を歩いていたわたしの前に、


「あっ」

「……ぅっ」


偶然出会した男の子は、何故かわたしを見るなり顔をしかめた。



(確か……)


「遠野さんの……」


「……姉貴のクラスメートの」



ポツリと呟いた彼は、今にも踵を返そうとしている。


遠野 聡利くん。


クラスメートである遠野さんの弟くんだ。


「し、失礼します……」


「あっ……」



(制服のボタンが取れかけてる)



聡利くんにとって、遠野さんを含めたお姉さん二人と妹さんの三人は頭の上がらない存在。



そんなお姉さんと一緒に居るところに初対面で出会しているわたしは、どうやら聡利くんにとってはあまり良い存在じゃないらしい……。



目も合わせないうちにそそくさとわたしの横を通り抜けようとした聡利くん。



制服の真ん中のボタンが今にも落ちそうに、糸一本でぶら下がっているのが気になって仕方無い。


(ソーイングセット持ってるし)



「待って聡利くん」

「っ!?」



スカートのポケットに入れていたソーイングセットを確認し、慌てて聡利くんの腕を掴む。