そっと歩み寄ったわたしに視線を向けることなく、優申先輩は静かに口を開いた。
「更紗は病気だったんだ」
ようやく重なった視線は、哀しい瞳で驚くわたしを見つめていた。
更紗さんが優申先輩の前から居なくなったのは、病気を療養する為だったらしい。
「なんで会いに行かなかったんですか?」
「なんで行けるの?」
思った疑問を口にすれば、優申先輩の顔付きがぐっと厳しいものに変わる。
「更紗にとって僕が支えになれる存在なら……更紗は黙って僕の前から居なくなったりするはずないだろ」
わたしの言葉にいつも穏やかだった先輩の口調が一気にトゲトゲしくなる。
悔しげに下唇を噛み、優申先輩は呆然と自分を見つめるわたしの視線で我に返ったのか、
「……ごめん」
と、小さく謝った。
わたしはただ、首を左右に振って気にしてないって告げるしか出来ない。
「僕じゃダメだったんだ……更紗の支えにはなれなかった」

