『The story of……』

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その日も先輩は、相変わらず窓の外の夕日へと思いを馳せていた。


どんな言葉を掛けても優申先輩には届きそうに無くて、わたしはずっと黙り込んでいた。



「更紗とは、十八になったら結婚しようって約束してたんだ」


そんなわたしの心情を知ってか知らずか、珍しく先輩から語り掛けてくれた言葉は皮肉にも更紗さんとの大切な約束の話だった。



「子どもっぽいって呆れられるかもしれないけど、僕は本気だった。更紗と居られるなら何だって出来るって信じてたから」



大切な思い出をゆっくりゆっくり思い出すように話す優申先輩の瞳に、優しい色が灯る。


それが悔しいって思うのは、思い違いなのかもしれない。



（嫉妬出来る程わたしは、優申先輩の心に映ってないもん……）



「何も目的の無かった僕は、更紗と約束してからはがむしゃらにバイトしてお金を貯めて……早く十八になりたいって、ずっと思ってたけど……」



そこで言い淀む先輩の顔が急に哀しげに曇り、思わず先輩の顔を窺うようにじっと見つめた。