『The story of……』

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九谷先輩への恋心に気付いたところで、わたしは特にアクションを起こすことも出来ずにいる。



学校で見かけてもただ遠くから見つめることしか出来ないもどかしさに、わたしは悶々とした日々を送っていた。



そんなある日、


「こんにちは」

「えっ……あっ」


クラス委員の仕事でいつもより遅い時間に学校を出たわたしに、思いがけない出逢いが待っていた。



「この間はクッキーありがとう、愛都ちゃん」



相変わらず九谷先輩の笑顔は優しくて、さっきからわたしの胸はドキドキしっぱなし。



「良かったら一緒に帰らない?」


送るよっ。


こう言って先輩は、わたしをさりげなく車道から離す。



そんな何気ない優しさも素敵だ。



一緒に居る間もずっと、九谷先輩の優しい笑顔はわたしを見つめてくれていた。


(……やっぱり素敵だな。九谷先輩)



そんな先輩を見つめ返しながら、胸の高鳴りははちきれそうなくらい賑やかになっていく。



(もっと先輩のこと、知りたい……)



確実に惹かれていく先輩の笑顔に近付きたい。