『The story of……』

九谷先輩の笑顔に、心臓がドキンッと高鳴る感覚。


机からぴょんと飛び降りた先輩は、


「どうかしたの?」


優しい笑顔を湛えたまま、わたしの方へと一歩一歩近付いてきた。



「あの……この間、ありがとうございましたっ」



その時のお礼です。


そう言って差し出した手作りクッキーを、九谷先輩はきょとんとした顔で見つめた後、


「僕に?」


また優しく微笑んでくれた。



ドキドキがさっきから止まらない。
ゆっくり頷いたわたしに九谷先輩は、


「ありがとう」



ぽふっと柔らかく頭を撫でてくれた。



それで一気に赤くなった頬を思わず手の甲で擦ってしまう。


「顔、真っ赤だよ」

(っ!?)



クスクスと笑い、長い人差し指で軽く頬に触れる九谷先輩は反則だ……。



さっきから止まらないドキドキ。
これは間違いない。
わたしは、この九谷 優申先輩に完全に惹かれてしまったんだ……。