「……なら、今度は俺に付き合え」
「……どこに?」
「日曜日。家まで迎えに行く」
(わたしまだ行くって言って無いのに……)
どっちみち断るつもりは無かった。
今日の埋め合わせっていう意味でも、付き合うつもりでは居たけど……。
「……何で来るの?」
(高級外車なんかで来られたりしたら、ご近所の噂になっちゃうよ……)
「歩いて、だ」
わたしの心配を察してか、やたらはっきりと言い放った八木くんが家庭科室の出口へと向かっていく。
……わたしの作ったお弁当をしっかりと持ったまま。
「楽しみにしてるねっ」
呼び掛けたわたしに振り返った顔はほんの少しだけ、柔らかく見えた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
日曜日。
約束通り、歩いて迎えに来た八木くんに連れられて来たのは、
「ここ?」
どこにでもある、ごく普通の水族館だった。
「不満か?」
「ううん。ちょっと意外だったから」
でも、楽しそうっ。
そう続けたわたしに、
「行くぞ」
(あっ……)
八木くんはそっと手を握って、入り口へと向かっていった。

