『The story of……』

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こうしてわたしが八木くんを連れて来た場所。

学校の近くにある大型スーパーだった。


「八木くん、好きな食べ物ある?」


「…………」



ひんやりとした空気が充満した店内で、ちょっとばかり浮いた制服姿のわたしたち。


それにも構わずわたしは買い物カゴ片手に、手近な棚から品定めを始めた。



「やっぱりお弁当の定番って言ったら……ウィンナーかなぁ」


そんなわたしの一歩後ろで、呆然と立ち尽くす八木くんを見ないふり。



「なぁ」


「なに?」


「何やってんだよ」

「買い物だよ」


「そうじゃなくて」


ちょっと苛ついた口調に、棚から視線を八木くんに向けた。


「お弁当作るの。わたしが八木くんに」


あくまでも笑顔を絶やさず、わたしはますます訝しそうな八木くんの顔を見る。


「何か好きなおかずある? あっ、でも高いモノとか常識外れなモノは無しね」



手近な食材をカゴに入れながら、足を進めるわたしの後ろで、


「卵焼き」


小さく呟く声が聞こえた。