「推薦が欲しいなら自分で取るよ」
「…………」
八木くんはちょっと悔しげに眉をしかめた。
わたしはそんな八木くんが、寂しく見えて仕方ない。
(……どうしてあんな、モノで心を動かそうとするような言い方をするんだろう)
「用事はそれだけ? なら帰るね」
「待てっ。……何だったら満足する?」
身を翻したわたしの腕を掴む力が強い。
縋るような必死にわたしに答えを問う顔。
どうすれば良いのかわからなくなった子どもみたいだ……。
「何が欲しい?」
「何って……」
「…………」
(なんでこんなに拘るんだろう……)
答えるまできっと、八木くんはわたしを離してはくれないだろう。
「じゃあ、ちょっと時間頂戴?」
「時、間?」
「うんっ。ちょっとわたしに付き合って」
わたしの頭に浮かんだ一つの考え。
訝しい顔をしながら、素直にわたしに付いてきてくれる八木くんに安心しながらわたしは学校の外に足を向けた。

