「八木くんっ! これ受け取って~!」
「八木先輩っ! わたしのもどうぞっ!」
登校してきて早々、校門の片隅で繰り広げられる光景に思わず呆然としてしまった。
(相変わらずすごい人気だなぁ……)
朝から複数の女子に囲まれた中心人物。
八木 透未(やぎ とうま)くん。
何でも、お祖父ちゃんがこの高校の理事長をしているらしい。
だから八木くんは、生徒会長として学校を牛耳ってるという話。
成績もトップクラス。
顔立ちも綺麗で……正に、女の子の理想を兼ね備えた王子様なのかもしれない。
(わたしには関わりのない世界だな)
女子たちに囲まれ、顔色一つ変えずに差し出された数々のお弁当を受け取る八木くんを見つめながら、わたしはそんなことを思っていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
放課後。
掃除当番だったわたしは、ゴミ箱片手にやってきたゴミ捨て場で思いがけない光景を目にした。
「あっ!」
思わず声をあげてしまった。
そこで見たのは、今朝校門で女の子たちから受け取ったお弁当を捨てる八木くんの姿だった。