そんなことを思いながら、教室の中を入り口から見渡していると、


「ちょっとごめんなぁ~。通してくれへんっ?」


背後から掛けられた声と、肩にふわっと置かれた手でわたしは慌てて後ろを振り返った。


わたしの背後に立っていたのは、派手な赤髪と関西弁を話す男の子。
三瀬 寅毅(ミツセ トモキ)くん。
そんな特徴的な彼は勿論有名人。
その理由は派手な見た目や関西弁だけではない。


「あっ……ごめんね?」


すぐに入り口から一歩退き、三瀬くんに道を譲った。

わたしに、三瀬くんはにこっと微笑んだ。

そして、

「全然ッ。おかげでこうやって話すキッカケになったしな。愛都ちゃん?」


軽くウィンクを飛ばし、教室の中へと入っていく。


これが彼が有名なもう一つの理由。


「……軽いな」


三瀬くんの後に次いでやってきた無表情な彼が呟いた通り、軽くて軟派なところ。


なんて納得してる場合じゃないっ。

ドンぴしゃのタイミングで返ってきた答えをくれた主を、驚いた顔で見上げた。


「……気をつけろよ。上総」



低い声で忠告を残していってくれた四谷 翔卯(ヨツヤ ショウ)くん。