(……まただ)


日直日誌を提出した帰り道の廊下。

部活に勤しむグラウンドを、じっと見つめる人影に出会した。
彼の視線の先には、走り込みをする野球部の姿。


じっと野球部を見つめる彼を見たのは、何度目だろう。


(……名波くんだ)

二年二組の名波 聖午(ななみ せいご)くん。


堅い表情で野球部を見つめる名波くん。


彼は何を思いながら、野球部を見つめているんだろうか……。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「上総って、部活とかしてないよな?」


こう言ってクラスメートの男の子に声をかけられた。


ゆっくりと頷いたわたしに彼は突然、顔の前で手を合わせ、


「頼む! 野球部の臨時マネージャーやってくれっ」


勢い良く頭を下げ始めた。


いきなり頭を下げ始めた彼と、いきなり拝まれるわたしに、クラスメートたちは何事かとこちらを見ている。


(へ、変な誤解されちゃうよ……)


とにかく、この状況を何とかしようと、


「わ、わかった。やるから頭あげて~」


わたしは勢い任せに頷いてしまった……。