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(あっ……)



「…………」


業間の休み時間。
廊下を通りがかったわたしの目に飛び込んだのは、騒がしい教室の中で気持ち良さそうに眠る陸奥くんだった。



突っ伏している机に誰かがぶつかっても、すぐ傍で甲高いバカ笑いが響いても……。



(……気持ち良さそうだなぁ)



陸奥くんの寝顔は変わらず、綺麗で穏やかで幸せそうだ。



そんな寝顔を教室の窓越しに見つめながら思うこと。


……どうして陸奥くんはこんなに眠ってばかりいるんだろう。
やっぱりあの噂が本当だからなのか……。



会話すらしたことのない、ただ一方的に知っているだけの陸奥くんが妙に気になってしまう。



彼の寝顔を眺めているうちに、通り過ぎる足元がやたらに遅くなってしまっていた。




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ある日の帰り道。


「あっ……」


わたしは例の眠り王子、陸奥くんが活動する姿を初めて目撃した。


場所は学校近くのコンビニ。


その雑誌コーナーで、立ち読みをする陸奥くんを気がつけば入り口の影から観察してしまっていた。


(何読んでるんだろう……)



コンビニに出入りする人たちの不思議そうな視線にも構わず、わたしは陸奥くんの手の中にある雑誌をまじまじと見つめる。