陸奥くんは、綺麗な形の二重を半開きにしたままぼんやり座り込んでいる。


「……なんで担任が?」



「朝に遅刻届け貰いに来たまんま教室に現れない……校内で行方不明になってるって」



「…………あっ」


ようやく自分の置かれた立場を理解したのか、陸奥くんの半開きの目がパッと開いた。


それと同時に深いため息を漏らす五木くんに、思わず同情してしまいそうになった。



(……遅刻した上にここでずっと寝てたんだ)



「とにかくっ! 職員室行くぞ、立てっ」


陸奥くんの腕を引っ張り起こし、立ち上がろうとしてる彼にお構いなしで駆け出す五木くん。


「……辰琉速い」


陸奥くんは長い足をよろよろと動かしながら、校舎の中へと消えていった。



その一部始終を見届けたわたしは、陸奥くんという人が一体どんな人柄なのか気になってしまった。



それはきっと、この眠り王子に関する噂を耳にしてしまったから。

来る者拒ますで夜な夜な女の人をとっかえひっかえしてるとか……。


そんな噂と今の彼があまりに違いすぎて。
噂の中の彼と今の眠り王子な彼。
どちらが本当の陸奥くんなのか、そんな疑問が頭の片隅から離れないでいたのだった。