「…………」


思わず購買帰りの足を止めてしまった。


麗らかな春の過ごしやすい陽気。
昼休みで賑わう中庭は、人で溢れてる。


そんな中で、まるでそこだけ違う世界なんじゃないかって……錯覚を起こさせる光景。


芝生養生中で立ち入り禁止の立て札なんて知らん顔で、植え込みの中で気持ち良さそうに寝息を立てる彼を見つけてしまった。


高い身長、手足を惜しみなく伸ばす寝顔に目を向けると……中性的な綺麗な顔立ちをしてる。


色白な肌に、薄茶の少し長めの髪の毛。


まるで絵本から抜け出したかのような、眠り姫ならぬ眠り王子がそこにいた。


(確か……三組の陸奥くん)


中庭の喧騒を物ともしない陸奥くんの安らかな寝顔に、思わず釘付けになっていると、



「またかよっ……匠巳(たくみ)っ!!」


どこからともなく現れた男の子が、素早く植え込みに飛び込んで陸奥くんに駆け寄った。



「ん~……辰琉」


「おまえ、担任が探してるぞっ!」


寝ぼけ眼を擦る陸奥くんを呆れたように見下ろしているのは、陸上部の五木 辰琉くん。



二人は同じクラスのクラスメートだ。