誰にも求めてもらえない辛さだけ体に刻まれた。

仕事は、キツくなるばかりだった。

そんな時に父がネットでみつけた県民共済のお見合いを勧めてくれた。

半信半疑でスーツを着て桜木町にある県民共済に行った。

写真撮影とビデオを撮られた。

後は、お見合い相手のビデオを自分で選択して観て紙に会ってみたい人の番号を書いて提出した。

大丈夫か?こんなんで見つかるのかよ?と疑問を感じながら帰った。

一週間後ぐらいして電話がかかってきて僕と会いたいという女性が現れた。

OKした。 

会う日は、少しオシャレな姿をして行った。

決まりは簡単だった。

10分話して気に入ったと思ったらそのまま外でお茶をして後日お互いの返事をするというシステムだった。

僕が、少し早めに到着した。

「こんな短期間でお見合い出来る人はなかなかいませんよ。」

と言われた。

奥の部屋で待つように言われて椅子に座って待っていた。

10分ぐらいして部屋に入って来た女性はとても可愛らしかった。

「すみません、遅れてしまって。」

「いえいえ、僕が早く来たんで気にしないで下さい。」

それから10分経過して係りの人が来てこれからどうします?と個別に聞かれた。

僕は、OKした。

彼女は…OKだった。

外に出てハワイアンなお店に入った。

「実は、わたし最近、失恋したばかりで。」

「あの、僕もです。」

「本当ですか?」  

「はい。」

それから汐里(仮名)と何時間か話した。

汐里は、店を出ると友達と約束があると言った。

僕は、それじゃあと言うと

「ちょっと買い物に付き合ってくれませんか?まだ時間もあるし。」

「良いですよ。」

と僕は答えた。

汐里は。広島出身だった。

「広島って遠いですね。」

両親が離婚して母親と汐里に弟が横浜に出て来たらしい。

「広島遠いですけど、父に会いに電車乗り継いで行った事があります。楽しかったな。」

「広島か~行ってみたいな。」

僕は、何となく呟いた。

「今度一緒に行けたら良いですね。」

と汐里が言った。

後は、仕事の話をしたり付き合ってた人の話をした。

この子なら大丈夫かな?…と僕は思った。

駅で別れて後は次の日の電話待ちである。

お互いにOKなら連絡先を交換出来るシステムだった。

久しぶりに、楽しい時間を過ごした。

次の日に、県民共済から電話がかかってきた。

シンプルな答えだった。

「清水汐里さんは、連絡先を交換して良いと言っています。○○さんはどうしますか?」

「大丈夫です。OKです。」

僕は、嬉しすぎて仕方なかった。

これで○○と完全におさらば出来る。

僕から、汐里に電話した。

「もしもし○○ですけれど。」

「はい。清水です。断られると思ってたので嬉しいです。」

「何でですか?」

「特に理由はないんですけど、自信がなかったです。」
 
次の会う日を決めて電話を切った。

県民共済に感謝した。父にも。

僕の職場は、飲食店だった。歴史は古い。  

○○に饅頭2バックと帰りに注文した。 

○○とは、終わった。汐里もいるしびくびくしていた自分に終止符を打った。

○○は、つまらなそうな顔をして僕に饅頭を渡した。

中間地点の藤沢駅で汐里と待ち合わせした。

居酒屋に行って饅頭を渡した。

「わたし、職人さんと結婚するのが夢だったんです。」

「何で?」

ぶっちゃけ、僕は、職人にはなりたくなかった。

「漠然とそう思ってたんです。」

汐里は、前は医者と付き合っていたらしい。

自分の世界に没頭して汐里の事を考えてない人間だった。
 
「医者は、大嫌いです。」 

「そうなんだ。」 

久しぶりに人間らしい人の温もりを感じた。

「俺も、自分勝手な女の人は嫌いです。」

もちろん、○○の事である。

○○に饅頭渡される時にデート?と聞かれた。

満面の笑みで「うん。」と答えた。

復讐ではないが勝利した気持ちになった。

それから汐里とは、デートを重ねて

もちろん大人の関係に、なった。

横浜にある教会の中でキスを繰り返した。

汐里は、看護師だったので僕の平日休みに合わせて休んでくれた。

無邪気に笑って泣いて過ごしていた。

ある日、汐里の最寄り駅で汐里を待っているとなかなか汐里は来なかった。

前に急患が出ると一緒に救急車で付き添わないといけないと言っていたのでそうだろうと思いずっと待っていた。

それから2時間後に彼女は来た。

「本当にごめん。急患だったから携帯電話忘れてしまって。」  

「良いよ。大丈夫。」

○○と付き合ってで忍耐力は人の数倍はある。

その日は、寒い今年最後の日だった。

居酒屋に行くとカウントダウンを他の客が手を叩いてし始めた。

自然と僕と汐里も口に出した。

乾杯した。
 
「一緒に年を越せて嬉しい。」

汐里は笑顔で言った。

いつもの数倍は、ビールが美味かった。