芹花の腰に置かれた手が、ゆっくりとした動きで芹花の背中を撫でた。
肌が透けて見える薄いレースの手触りを楽しむかのように動く熱に、芹花は思わず息を漏らしそうになる。
「このドレス、俺が思っていた以上に芹花に似合っていて、他のオトコの目に触れさせたくない。ずっと俺の腕の中に閉じ込めていたい」
「な、なんでそんな冗談を言うんですか」
「こんなことなら、露出を極力抑えた野暮ったいドレスを選べばよかった。といっても、桐原さんが作るドレスに野暮ったいものなんてないんだよな」
「悠生さん、あの、何を言ってるのかさっぱりわからないんですけど」
「ん? そんなの簡単だろ? この素敵なドレスを着て披露宴に出席するから楽しみにしてろって、今撮った写真を送ればいいって言ってるんだけど」
「な、なんで、そうなる……」
芹花は自分が悠生の恋人なのだ錯覚しそうになる。
小さく首を横に振れば、動揺しているせいか軽いめまいも覚えた。
「芹花」
名前を呼ばれても顔を上げられない。
抱きしめられたままじっとして、この状況を理解しようとするが、その間も背中に感じる悠生の指先が邪魔をしてまともに考えられない。
「芹花、顔を上げろ」
さっきより強い声に、渋々顔を上げた。
熱を帯びて真っ赤に違いない顔を見られたくない。
「俺もタキシードを着ていれば完璧だったな」
見上げた芹花の頬に手を当てて、悠生は顔を寄せた。
「え?」
「まあ、タキシードはそのうちに」
「あの」
戸惑う芹花がこぼした言葉を受け止めるように、悠生は唇を重ねた。

