極上御曹司に求愛されています


「悠生さんは誰もが知る大企業の御曹司でテレビとか雑誌に出ることもあるんですよね? 昨夜ネットで調べたらいろいろ出てきてびっくりして。あ、私との写真が流出したらまずいから、綾子にもう一回言っておかなきゃ」
 
芹花はキョロキョロと辺りを見回した。
部屋の片隅の椅子の上に置かれているコートやカバン、そしてスマホが目に留まった。

「今すぐ綾子に電話して、写真は絶対に拡散しないようにって釘を刺さないと」
 
早くしなければと焦り、悠生の腕から抜け出そうとしたが、悠生はそれを許さない。
芹花の肩を抱いたまま、にっこりと笑う。

「あの、悠生さん? 急いで綾子に連絡しなきゃ」
「連絡するのはいいけど、芹花に新しい恋人ができたって喜んでるなら水を差すことはないんじゃないか?」
「それはダメです。もしもあの写真が流出しちゃったら、困るのは悠生さんだから。本当にごめんなさい。私、悠生さんが有名人だってよくわかってなくて、礼美の結婚式が終わるまで恋人ができたってごまかしてみんなを安心させようと思って」
 
今となれば後悔ばかりだが、礼美の披露宴に欠席者が続出となれば大変なことになる。
それを防ぐためにも芹花には恋人がいて幸せに過ごしていると納得させなければならなかった。

「だけど……そのために関係のない悠生さんに迷惑をかけるわけにはいかないので。今すぐ綾子に電話をかけて」
「迷惑じゃないけど?」
 
どうにか悠生の腕を振り切ってスマホを取りに行こうとするが、またもや悠生は芹花を放そうとしない。
それどころか両手を芹花の腰に回し、引き寄せた。

「あの、悠生さん? 私、急いでるんです」
 
肩を抱き寄せられているどころではない、体すべてが寄り添うこの状況を理解しようとするが、悠生に甘い表情を向けられて言葉を失った。
ほんの少しでも顔を動かせば、頬や唇が重なりそうなほど近くに悠生の整った顔。
簡単には動けないことに気づき呆然とする。