極上御曹司に求愛されています


店の奥にある相談室。
試着ルームを兼ねた広めの部屋で、芹花と悠生の視線が絡み合う。
滑らかな肌が輝く肩から鎖骨のラインまでもを赤く染めた芹花は、悠生にまっすぐ見つめられ、恥ずかしくてたまらない。
ほんの数秒のことなのに、芹花の鼓動が跳ねるには十分な時間だった。
とくとくと響く心臓の音が次第に速さを増し、部屋中に響いてしまうのではないかと息を詰める。
二人しかこの場にいないかのような空気に包まれ、居心地の悪さを感じた恵奈は、ひときわ大きな声を上げた。

「まるで芹花さんのために仕立てたみたいによく似合ってるし、ぴったりね。それに合うハイヒールがたしかあったはずだから、持ってくるわ」

棒読みに近い言葉に悠生はちらりと恵奈を見るが、唇をくっと上げただけで芹花に視線を戻した。
両手を胸の前でぎゅっと合わせ、心もとなげに立つ芹花に引き寄せられるように足を進めると、部屋を出た恵奈がドアを閉めた音が響いた。
その音にピクリと体を震わせた芹花は、弱々しい笑みを浮かべた。

「こんなに素敵なドレス、やっぱり私には似合わないかな……。着慣れてないし、おかしいですか?」
「まさか」
 
悠生は気まずそうに笑う芹花の前に立つと、すっと手を伸ばし芹花の耳に触れた。

「サファイアのイアリングをプレゼントするよ」
「え、サファイア?」

悠生は頷くと、芹花の耳たぶを何度も指で確認し、その温かさに触れる。

「ここまで似合うとは思わなかったな。それなりに肌の露出はあるけど、芹花の色白の肌が強調されていいと思っていたんだけど。このままじゃ、披露宴で男たちの目が芹花に集まりそうで……いい気分じゃない」

チッと舌打ちする悠生に、芹花は目を見開いた。
育ちのいい御曹司が舌打ちなんて信じられない。
そんな芹花の思いを察したのか、悠生は苦笑する。
照れくささが見え隠れするその表情に、芹花は見とれた。
どんな表情をしても、男前は格好いいのだと改めて実感し、一層心はドキドキ弾む。

「耳と胸元にサファイア。当日身に着ける物は、俺が全部用意する」
 
熱い吐息とともに悠生が口にした言葉に、芹花は震えた。