「あの、これがいいかなと思ったんですけど」
悠生と恵奈がどんな反応を見せるか気になりながら試着室から出る。
そして、それまでと同じようにゆっくりとその場で回って見せると、プリーツたっぷりのスカートが軽やかに広がった。
「芹花さんにぴったりでキレイよ。私が用意したドレスよりも断然似合ってるなんて悔しいけど、さすが木島さんってところかな」
芹花の華やいだ姿に目を細めながら、恵奈は唸る。
自分が選んだドレスよりも悠生がほんの少しの時間で選んだドレスが芹花にしっくりとなじんだのが悔しいのだ。
恵奈は意味ありげに笑うと、悠生の耳に口元を寄せた。
「見れば見るほど芹花さんに似合ってるのよね。これってやっぱり木島さんが芹花さんを気に入ってるからかしら?」
からかっているとすぐにわかる口調にも表情を変えず、悠生はただ芹花を見つめている。
肌をほんのり赤く染め、恥ずかしそうに立っている芹花から目が離せないようで、身動き一つしない。
「あの? 似合ってないですか?」
ドレスを着て見せるたび、すぐにスマホを構えて何枚も写真を撮っていたのに、立ち尽くしたように芹花を見つめている悠生。
彼の様子に違和感を覚えた芹花もまた、動きを止めた。

