極上御曹司に求愛されています



それから一時間、芹花の意見が聞き入れられることなくドレスが集められ、芹花は言われるがまま試着を繰り返した。
あらかじめ恵奈が用意していた数着のドレスだけでなく、悠生が選んだドレスを身に着け、その都度試着室から出て悠生と恵奈に見せる。
悠生はスマホで何枚も写真を撮りながら、恵奈に細かい注文をつける。

「背中のラインがキレイだから、もう少し見せてもいいんじゃないか?」
「足がまっすぐだから膝上もアリだな」
「オフショルダーだと露出が多すぎるから却下」
 
試着を繰り返した芹花は疲れていたが、キレイなドレスを身にまとう自分を楽しんでいた。
桐原恵奈のドレスなのだ、どれも素晴らしくて一着に絞れそうにない。
悠生に買ってもらうわけにはいかないと思いながらも、こんなキレイなドレスを着て披露宴に出席したいと思ってしまう。
礼美の結婚式までに適当なドレスが見つけられなかったら、これまで何度か袖を通したことがある、紺色のワンピースを着ようと考えていたが、今となれはそれでは物足りない。

「うわ……この光沢、すごい」
 
何着目かわからないドレスは、悠生がリクエストしたデザインそのもので、ハイウエストで切り替えられたドレスワンピースだ。
スカート部分はシフォン素材で、空気を含みふわりとしている。
鎖骨がキレイに見える胸元はかわいい刺繍が施されたレース地で、ところどころにきらきら輝くビジューが縫いつけられている。
慣れないノースリーブが気になるが、淡いパープルのせいか、露出多めにもかかわらず落ち着いた雰囲気だ。

「これ、一番似合ってるかもしれない」
 
芹花はとくにおかしなところはないと頷くと、そっと試着室のドアを開けた。